「シナリオ」DVTを購入する

ジャン゠リュック・ゴダール 遺作

シナリオ

Scénarios

Introduction

「そのふたつのシナリオを完成させて、自分の映画人生、映画監督人生を終わりにする。そして映画に別れを告げる」

(2021年3月「ケララ国際映画祭」ビデオインタビューより)

2022 年 9 ⽉ 13 ⽇にこの世を去ったとき、ジャン゠リュック・ゴダールは⾃分が書いたシナリオに従って⾃発的な死を遂げた。2年前から彼は『シナリオ〔Scénario〕』と題した、エクランノワール・プロダクションのミトラ・ファラハニとアルテとの共同製作による最後の⻑篇企画に取り組んでいた。モンタージュの構想を記した⼿帳やノートが、アイデアを明確にするために何冊も作られた。ところが、ジャン゠リュック・ゴダールは死の数⽇前になってカードを切り直し、⼆部構成の映画を仕上げるように指⽰を出した。それに従ったのが『シナリオ〔Scénarios〕』である。その⼀年前、2021 年 10 ⽉には、『シナリオ〔Scénario〕』の企画の構想を、アシスタントのジャン゠ポール・バタジアとファブリス・アラーニョに説明していた。その説明の模様を収めたのが、⼆番⽬の映画『シナリオ:予告篇の構想』である。

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シナリオ

ジャン゠リュック・ゴダール

「シナリオ」とは、物語を語るやり⽅に映画が与えた名前であるとともに、ジャン゠リュック・ゴダールが⾃⾝の最後の映画に付けることにしたタイトルでもある。この映画は、彼が⾃発的な死を遂げた⽂字通りの前⽇に作られたが、だからといってそれは完成に⾄らないわけではなく、まさしく未完成であるという状態で実現されることになるのだ。さて、『シナリオ〔Scénario〕』は最終的には複数形で『シナリオ〔Scénarios〕』と書かれ、「DNA 基礎を成す要素」と「MRI オデッセイ」の⼆部構成となる。DNAとは⽣物学的な署名であり、それが⼈間主体を特異なものとして構成する。MRIは医学的な画像と衰弱した⾝体の苦しみを思い起こさせ、主体が磁気共鳴の戯れのうちに溶解していくことを暗⽰する。こうして厳密に物質主義的なやり⽅で起源と衰退を喚起する2つの極のあいだで繰り広げられるのは、ある主体の物語、ノートと画像を混ぜ合わせ、18分に凝縮したものからなる物語である。唯⼀無⼆でありながら集合的な語り、死に取り憑かれた⽣の語り。というのも、この映画は永遠の別れの挨拶、葬送の挽歌でもあるからだ。2つのパートはそれぞれ、まったく同じ⼀連のシークェンスで幕を開けるが、第⼆部になると分岐していき、JLGの⾃画像――これが彼の最後のイメージとなる――で終わる。ベッドに腰かけ、ピガールによるヴォルテールの彫像のごとく上半⾝をあらわにし、⾝体の衰えをいっさい隠すことなく、指ならざるものについてのジャン゠ポール・サルトルによる論理的にして滑稽な⼆重の教訓話を書き写す姿である。『シナリオ』は〔各パートの〕幕開けと同じく、繰り返しで終わりを告げる。すなわち、永遠回帰という、時間――それは映画にとっての唯⼀ではないにしても⼤きな問題だったことになるだろう――が過ぎゆくものではなくなった瞬間の形象とともに。

制作 | Écran noir productions (フランス) — Arte France (フランス) — Nekojarashi/Roadstead (日本)

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シナリオ:予告篇の構想

ジャン゠リュック・ゴダール

2021年10⽉、ジャン゠リュック・ゴダールは『シナリオ』という6つのパートからなる⻑篇映画の企画の構想説明を⾏った。静⽌画像と動画像を混ぜ合わせ、読むことと⾒ることの中間にあるような映画である。

制作 | Écran noir productions (フランス) — Arte France (フランス) — Nekojarashi/Roadstead (日本)

レビュー

“凄まじい映画だった。 全世界、全歴史、そして全映画と深くコミットしながらも、最後は「それは私である」と高らかに宣言され、圧倒される。 これぞ監督主演映画の最高の到達点。”

黒沢 清(映画監督)

“ある意味でゴダールは最初から最後まで、ひたすら「遺作」を撮り続けた映画作家だったと言えるかもしれない。 だが、これが本当の彼の最後の映画である。真の遺作が『シナリオ』と題されていることの意味を、今こそ私たちは考えなくてはならない。”

佐々木 敦(批評家)

“チューブからそのまま絵の具を絞り出したような鮮烈な画が続き、自分の中のプリミティブなものが覚める。 『シナリオ』は映画的想像力の核心であり、圧倒的な生の自由。”

甲斐 さやか(映画監督)

“どこまでも自由。それがクリエイションの鉄則なのだと、この強烈な一作を最後の最後に叩き込んできた。 本作は、ゴダールの遺言にして挑戦状。そして究極のアートである。”

原田 マハ(作家)


ゴダールの共犯者たちが、死後も長く輝き続ける天賦の才能をなぞらえたとして、彼がその生涯の終わりに、映画そのものではなくそのアイディアを撮る誘惑に駆られていたのは事実だ。何にせよ、二つの仮説ー『イメージの本』こそがゴダールの遺作である、否、以後の作品もまた、彼自身の作品であるーの間で揺れ動きながらも、今日私たちは、この作品を前にしているのだ。

ジャック・マンデルボーム

Le Monde

『シナリオ』のラストショットは、極限状態の痕跡として非常に感動的であるが、この瞬間は何よりも『勝手しやがれ』(1960)と『イメージの本』(2018)の映画作家が様々な方法を介して決して作業を止めなかった「思考する形式」の探求の一部でもある。

ジャン゠ミッシェル・フロドン

Slate

極限の窮迫の中で、老いた天才は『シナリオ』において、彼が絶えず探求していたものを再び見出すだろう。芸術の幼少期を。

マルコス・ウザル

Cahiers du cinéma

ゴダールは、最後にもう一度、映画における物語、形式、視覚のシステムに革命を起こすことで、我々観客に同様の振る舞いを、メディアへの絶え間ない考察を続けることを促す。

マリー゠ポリーヌ・モラレ

Bref cinéma

Scenarios Poster

Roadsteadで世界初のプレミア販売

特別レプリカノートブック付き限定DVT

劇場公開に先立ち、「シナリオ」はWeb3プラットフォームRoadsteadでDVTとして独占先行販売されています。全世界で100個限定です。各購入者には、特典として、劇中に登場するものを含む5冊の特別なノートブックのレプリカが贈られます。

Roadsteadは、デジタル映画をDVDのような物理的なアイテムとして扱うユニークなプラットフォームを提供します。ユーザーはこれらの限定版映画を視聴・販売でき、各作品にはエディションナンバーが付いており、購入者のみが視聴できることを保証します。先駆的な「DVT」(デジタルビデオトレーディング)プラットフォームとして、Roadsteadはクリエイターへの公正な報酬と持続可能な映画製作の促進を目指しています。

『シナリオ』(Scénario)

ジャン゠リュック・ゴダールの5冊のノートブック

Scenario Notebook

『イメージの本』が完成して2018年のカンヌ国際映画祭でスペシャル・パルムドールを受賞してから2022年9月に自発的な死を遂げるまでのあいだ、ジャン゠リュック・ゴダールはある企画に取り組んでいました。初期の段階では、その企画は演劇とオペラと映画を結びつける複合的な形態をとるものと考えられていました。

しかし、さまざまな関連機関との調整が難航したことに加えて、ゴダールの体調の衰えもあり、まずは『シナリオ』を1本の映画作品に仕立て直すことになりました。そして終いには、映画という大掛かりな機構を動かすことの困難が日を追うごとに少しずつ増えていくように思われるなか、準備ノートが企画から生み出された唯一の結果として重要な位置を占め、その本質をあらわすものとなったのです。

コラージュ、引用、アッサンブラージュによってノートを制作するというやり方は、ジャン゠リュック・ゴダールの仕事に繰り返し登場するものです。その際、手作業に基づくとともに概念的でもあるさまざまな技法(構成と断片化、消去と抹消、加筆とさらなる付け足し、補足と修正、おおよその推定、くり抜き、……)が総動員されています。こうした数々の技法は、探究の道具であると同時に、企画のかたちに沿った独自の言語の一形態を練り上げる過程でもあります。

2019年から2021年にかけて、ジャン゠リュック・ゴダールは『シナリオ』のために5冊のノートを続けざまに構想しました。彼はノートが『シナリオ』の最終的な形態になることが明らかになるにつれて、特に念入りに構想を練るようになりました。それぞれの新たな試作は、『シナリオ』の諸特性を探究する旅路における一行程の到達点であり、先行するすべてのノートを補いつつ、いっそう複雑にするものです。

紙の上で展開される映画、日の目を見ることのない1本の映画の亡霊としての5冊のノートは、「フェイクニュース」、「固定観念」、一神教、人間喜劇といった、繰り返し出てくるテーマに取り憑かれています。

映画の技術的手段から解き放たれたジャン゠リュック・ゴダールは、最後まで、1本の映画の言語になりうるようなひとつの言語を探し続けていました。そのことは、彼が5冊目のノートに関して行う読解を2021年に36分のひと続きのショットで撮った『シナリオ:予告篇の構想』を見れば一目瞭然でしょう。

自ら命を絶つ一週間前、ジャン゠リュック・ゴダールは『シナリオ』(複数形のScénarios)と題された18分の短篇を完成させるよう指示を出しました。彼が取り組んでいた最後の企画の最後の余波のようにみえる作品です。

5冊のノートのレプリカは、印刷所の技術的手段を駆使して、可能な限りオリジナルの造形的な質感に近づけています。

番号入りの1000部限定となるこのボックスセットは、2025年7月に、『シナリオ』の企画の製作を担ったエクランノワール・プロダクション(フランス、パリ)が、ル・リーヴル・ディマージュ・エディション(フランス、パリ)を通じて、RWBエディション(アメリカ合衆国)との共同で刊行しました。印刷はセグラーテ(イタリア、ミラノ県)のグラフィーケ・ミラノが手掛けています。

Scenario Notebook Set
ボックスセットの内容
  • ノートブック1の複製(2019年5月)19 × 22.5 cm、18頁
  • ノートブック2の複製(2020年7月)23 × 29.7 cm、ワイヤー綴じ、78頁
  • ノートブック3の複製(2020年12月)20.5 × 29.5 cm、36頁
  • ノートブック4の複製(2021年3月)10 × 15 cm、40頁
  • ノートブック5の複製(2021年10月)21 × 14.5 cm、28頁
  • 5冊のノートのマイケル・ウィットによる英訳と、ドミニク・パイーニ、ニコル・ブルネーズ、ジャン゠ポール・バタジアによる解説を収めたブックレット

※特典は、本編をご購入いただいた方へ郵送いたします。

※特典内容は予告なく変更する可能性があります。

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